水俣ですすむ資源循環型地域づくり


環境自治体会議 環境政策研究所 中口 毅博 (2007.11)


 環境再生に向けた市民・企業・行政による協働を、全国に先駆け実践してきた水俣市。環境モデル都市を目指す水俣市の政策と、その成功要因の検証からは、さまざまなことが見えてきます。ここでは、市の資源循環型地域づくりを支えているごみ減量女性連絡会議の活動、そしてみなまたエコタウン事業について紹介します。

 

1.水俣市ごみ減量女性連絡会議

 

◆ 家庭にごみを持ち込ませない―ごみ減量をめざし発足

 水俣市ではごみの多分別を実施することで、当初は1万tに近づいていたごみの総量を平成6年には8千t台まで減少させた。しかしダイオキシン汚染の問題で自宅ではごみを焼却できないようになったことも相まって、総量は再び1万tに近づき、分別するだけでは減量が進まない状況にあった。そこで、出すごみを資源化してごみを減らす取組以外にも、家庭にごみになるものを持ち込まないことや、リサイクル商品の購入を進めるなど、市と市民が協働して、市内の婦人会など16団体女性の代表者らでつくる「水俣市ごみ減量女性連絡会議」を平成9年12月に発足させ、ごみ減量に必要な仕組みづくりを検討し、実践している。
 各団体の代表者は交代するのでメンバーは入れ替わっているが、活動は10年間継続しており、現在は年4回程度全体会議を開催している。
 

◆ 商店と協力したエコショップ認定制度を実施

 水俣市ごみ減量女性連絡会議は、家庭に入ってくるごみの中で何が多いか検討する中で、まず容器包装のトレイやレジ袋に着目し、市内の4つの生協やスーパーと意見交換し、店の中に立ち入っての実態調査や高知市の視察を経て、市役所を通じてトレイの廃止を打診した。4つの店舗は最初は消費者が逃げるのではないかと危惧したが、ごみ減量女性連絡会議メンバーは会員に広めるからと諭し、平成10年9月、ごみ減量女性連絡会議16名と4店舗の間で市長と市議会議長の立ち会いのもと、生鮮食品96品目中65品目について「食品トレイ廃止申し合わせ書」を締結した。平成12年10月には「第2次食品トレイ廃止申し合わせ書」を締結し、品目数を76品目に増やした。
 トレイ廃止協定はエコショップ認定制度へと発展する。平成11年には筑後市へのエコショップ視察を経て、同年4月、先の4店舗について審査した上で、市長室にてエコショップの認定証交付式を行った。同年12月にはさらに9店舗を認定し、計13店舗となった。以降毎年1回、エコショップの定期審査を実施しており、平成19年2月には16店舗の定期審査をしている。定期審査は市から店舗に連絡してもらい、連絡会議メンバー1〜2名が市の職員とともに客のあまり多くない時間帯に店舗を訪れる形式で行っている。
 平成10年10月からはレジ袋をなくす運動として、市内12,400の全世帯への買い物袋1)の無料配布に携わる。しかしその使用状況は3割程度というのが現状であった。その後、レジ袋の有料化、ポイント制の導入など買い物袋を使用した際のメリットの検討など、店側との協議を進めた。その結果、平成12年4月には、大型店舗のうち1店が、買い物袋持参者に対するポイントカード制を導入した。消費者側の意識を上げることも必要なため、市広報等で逐次啓発を行っている。
 さらに平成13年4月からはごみ減らしのための手作り紙芝居を作成し、完成後、市内各団体への貸し出しを実施した。また、平成15年には作成した紙芝居を市内9つの小学校に贈呈し、環境教育に活用してもらっている。
 

2.みなまたエコタウン事業

 

◆ 地域内ゼロエミッションの実現に向けて

 エコタウン事業は、国(経済産業省と環境省)が平成9 年度にゼロエミッション構想を進めるために創設した制度である。平成13 年2 月、水俣市は環境保全活動を活かした資源循環型社会の構築を目指し1992年に宣言した「環境モデル都市」にふさわしい産業の創出と育成など、小都市型エコタウンの展開を特徴とした「水俣エコタウンプラン」を策定し、経済産業省と環境省から全国で13 番目の承認を受けた。水俣エコタウンには、平成13 年度以降、家電リサイクル、びんのリユース・リサイクル、使用済オイルリサイクル、し尿等を原料とした肥料製造、使用済タイヤリサイクル、廃プラスチックリサイクル、建設廃材・アスファルトのリサイクル合材製造、ペットボトルリサイクル等の企業が立地し、操業している。
 エコタウンに立地する企業の雇用者数は平成19 年4 月1 日現在9 社で236 人であり、施設の見学者数は延べ3,100 人に及んでいる。見学者数の増加に伴いガイド事業を立ち上げ、「観光物産協会 エコみなまた」を窓口として企業視察を有料で受け入れている。
 

◆ 地域密着で総参加型環境モデル都市をつくる

 みなまたエコタウンプランでは次の3 つを基本方針として掲げている。・・資源循環型経済社会づくりと環境共生を目指す、行政・産業界・市民が一体となった「総参加型」・・身近な素材(原料)や技術を活用し、4 R 2)の実現に繋がるような「地域密着型」・・大都市におけるコンビナート型など、従来のスタイルとは異なる「中小都市のモデル」、すなわち水俣ならではの高い環境意識・協働意識などを基盤として、独自性・先駆性に富んだ資源循環型地域社会を目指すものである。水俣市民が資源の分別を丁寧にしており、市民が洗ってきれいなびんが集まることも企業を動かし、びんのリユースをメインに掲げたプラン策定が可能になった。国は当初、昭和初期のシステムだとして先駆性を疑問視したが、リユースシステムを再構築することは理想の循環型地域社会に近づけるために必要と主張し、最終的には認めてもらった。
 エコタウンの指定を受けたことで、設備投資に国から最大で2分の1の補助が得られることになり3)、1〜5年の間に9社が立地することになった。立地場所は臨海部に位置し、新日本化学工業が平成7年に撤退した土地を市の土地開発公社が産業団地として整備したところであり、エコタウン協議会に加盟していない企業も立地している。また立地する企業とは「環境に配慮した立地協定書」を結び、環境対策や情報公開などに高いハードルを設けている。これによって水俣に立地することは環境に配慮した企業としての証しになり、環境に配慮した企業活動を市が宣伝するといった連携もとっている。
 

◆ Rびんのリユースシステムと今後の課題

 水俣市の半径50km 以内に焼酎などの造り酒屋が250 社ほどある。小さな企業は一升びんが買えないので中古びんを使用するが、その中古びんが不足していた。焼酎はほとんど地元消費型であり、中古びんの一定の需要が見込め、回収のシステムができれば洗って使い回しができるものと考えられた。また900ml のびんについては、平成15 年〜 17 年の3 ヶ年で環境省の循環型社会形成実証事業の一環として、統一R びん(リターナブルびん)が開発された。これは産業団地に立地した(株)田中商店と、一般市民、大学研究者、市議からなる「R びんを広めよう会」や「R びんで飲もう会」が中心となり開発・普及したものである。田中商店で扱うR びんは、平成19 年8 月現在、熊本県及び鹿児島県の酒造メーカー9 社21 銘柄で使用されている。
 R びんの出荷量は平成16 年度が137 万本、17 年度が170 万本、18 年度が189 万本と伸びてきているが、回収量は平成16 年度が25 万本、17 年度が50 万本、18 年度が54 万本と増加しているものの、回収率はまだ3 割弱にとどまっている。回収分のうち水俣市の収集によるものは15%程度であり、残り85%が酒屋、居酒屋、スナックなど民間からの回収である。
 R びんの使用によって、行政は容器包装リサイクル法に基づくごみの収集・選別・保管をメーカーに代わって行う必要がなくなり、無駄な税金を使わなくてすむ。また、税金を納めている市民にとっても、税金を有効に活用することになる。さらにメーカーにとっては自社から出るごみの減量という社会的責任を果たすことになり、またコストの面でも新品のびんを購入するより2 割程度安く上がる。LCA(ライフサイクルアセスメント)分析によっても、ワンウェイびんや他の容器に比べ、R びんを繰り返し使った方がトータルの環境負荷が少ないことが検証されている。
 今後の課題としては、まずリユース・リサイクル施設におけるR びんや原料の安定供給があげられる。Rびんの回収率はまだ低く、小売店や居酒屋、消費者への一層の回収協力の働きかけと、酒造メーカーへのRびん採用の働きかけを行っていく必要がある。リサイクル原料については平成19 年度廃プラスチックリサイクル施設で大口の取引自治体の廃プラを落札できず、原料供給が3分の1に減ってしまうなど、価格競争が激しくなっており、収益を確保しながら原料を獲得することが課題となっている。
 また出口対策として、メイド・イン・水俣のリサイクル商品の販路を開拓していくことが課題である。さらに環境配慮型の企業誘致の一層進めるとともに、地元企業どうしの異業種交流などによって、地産地消を進め、地域経済を一層活性化させていくことが求められている。



注)
1) 買い物袋は市が予算化したものである。
2) 水俣エコタウンプランにおいては、3R(リデュース:減量、リユース:再利用、リサイクル:再生利用)に、リフューズ(持ち込まない)を加え、4 R としている。
3) 実際補助を受けたのは廃プラスチックリサイクル施設(約14 億円)と、びんリユース施設(約3 億円)の半額である。

(以上)