書評 江崎美枝子+喜多見ポンポコ会議『公共事業と市民参加』


 (2007.11)

 『ここに幅40mの高速道路をつくることになりました』穏やかな日常生活を送っていた閑静な住宅地で、にぎやかな商店街で、自然豊かな市民の憩いの場で突然そう言われたら、あなたはどうするだろうか――。本著プロローグで語りかけるのは、東京は世田谷区喜多見に住む江崎美枝子さんとその仲間たち、住み慣れた町で日々の暮らしを営む、私たちと同じ「普通の市民」である。

 練馬〜世田谷間の外環道路が整備されれば、まちの姿は一変する。住宅地に高速が走ることで、環境にはどのような影響が出るのか。渋滞や大気汚染は本当に軽減するのか?スケールの大きな公共事業計画にとまどいつつも、「外環の必然性を見極めよう」との一心で、国・都の資料室へと通い詰め、現地調査を行い、ワークショップを開催する市民グループの行動力と熱意に圧倒される。と同時に、本著からは、普通の市民が公共事業計画を知ろうとすることの並々ならぬ困難も伺える。提供される情報は、事業主体である国、都が作成したものばかり。データの出所を知ろうとすれば、「非公開」の壁に跳ね返され、情報公開手続きに手間どられる。それでも足をつかい、資料を読み込み、学習会やデータ解析を繰り返すうちに、彼女たちはやがて数々の協力者を引き込みながら、不確かな行政資料の誤りを正し、自らデータを分析できるまでに力を備えていく。

 外環道路計画は、日本で初めて大型公共事業の構想段階にPI(Public Involvement,市民参画)が用いられた事例でもある。PI協議会に市民委員として携わった著者らの記録は、今後PIに関わるであろう市民にとっても有益な情報となるだろう。本著では市民グループの立ち上げから資金調達、広報活動といった運営上のノウハウに加え、交通需要予測などの専門データの入手方法や取り扱い方などについても分かりやすい解説を試みている。市民が、市民感覚でとらえた問題意識を掘り下げ、社会的にアプローチしていこうとする際の指南書としても、大いに活用にしてほしい一冊である。



(以上)