米国自治体の成功例に学ぼう!〜実効性ある温暖化対策の姿〜(5)


環境自治体会議環境政策研究所/増原 直樹 (2007.1)

 ロッキー山脈のふもとに位置する米国コロラド州ボルダー市(人口約95,000人)では、この原稿執筆最中である12月14日から、太陽光発電や太陽熱利用温水システムの導入に対する税の還付制度が開始された。また、これとは別に、同市の住民投票で11月8日、気候行動計画税(Climate Action Plan Tax)が可決された。本稿では、全米の中でも積極的に温暖化防止と自然エネルギー利用を推進しているボルダー市の事例を2回に分けて紹介する。

 

■炭素税と同等の効果をもつエネルギー税の導入

 「気候行動計画税」は、米国内の自治体が住民に対して課す税金としては初めて、温暖化防止行動のためという用途を限定したエネルギー税である。このエネルギー税はボルダーの電力会社が、住民から、それぞれの電気使用量に応じて徴収するしくみとなっている。ボルダーで使用される電力のほとんどは石炭火力発電で発電されたものであるため、このエネルギー税が炭素税としての効果も有しているといえる。税収は2006年6月に市議会が可決した市の「気候行動計画」の財源として活用される。


 税額は、いずれも1kW時あたりの電力使用に対して、家庭用は0.22セント(約26銭)、業務用は0.04セント(約5銭)、産業用は0.02セント(約2銭)と、家庭用がもっとも高くなっている。このため、平均的な家庭の負担は月1.33ドル、平均的な事業者の負担は月3.80ドルと予測されている。総額では、税の賦課が満了する予定の2012年度まで、毎年100万ドルの税収見込みとなっているが、気候行動計画を実施する結果、光熱費の節約効果は長期的には6300万ドルに達すると予測されている。なお、税額は年々、市議会の決定に従って上がっていくことが想定されており、その上限は家庭用0.49セント、業務用0.09セント、産業用0.03セントと、家庭対象の上限税額が比較的高めに設定されている。
 ボルダー市議会は2002年に、京都議定書で米国に課せられた目標と同様、温室効果ガス排出量を2012年までに90年比で7%削減するという目標を採択した。この目標を達成するための「道しるべ」である気候行動計画は、地域のエネルギー専門家、利害関係者と市職員が協働して策定されたものである。計画の主な戦略は、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギー及び車の代替燃料の促進、そして車の利用距離の削減となっている。
 

■計画では、財源と行動を明示

 ボルダー市の気候行動計画は、日本の自治体における地球温暖化対策地域推進計画と比較して、それほど大きく異なってはいないようにみえるが(9月に改訂された計画の目次は表1を参照)、下記の2つの点が注目すべき内容であると考えられる。
 @本計画の柱の一つと思われる第4章が、行動計画のための財源及び費用の見積りとなっている点。
 A本計画のもう一つの柱と思われる第6章(実行計画)の末尾に「行動勧告」が含まれている点。

 そもそも、ボルダー市議会が市内の温室効果ガス排出量を1990年比で7%削減するという京都議定書に準じた目標を設定したのは2002年5月のこと(第906号決議)である。それを受け、市の環境問題オフィスに対し、この目標を達成するための行動計画を策定するよう指示が出された。その後、ボルダー市の温室効果ガス排出量が確定されたのは2004年になり、2005年から06年にかけて、本計画が検討された。
 計画によれば、ボルダー市の温室効果ガスの排出内訳(総量はCO2換算で181万トン)は次のようになっている。
 @エネルギー源別にみると、電力が51%、運輸が28%、天然ガスが17%、固形廃棄物が4%。
 A部門別にみると、業務部門が30%でもっとも多く、運輸が28%、家庭が17%、産業が15%、市有施設が5%、廃棄物が4%、街灯が1%。

 

■廃棄物税から気候行動計画税へシフト

 第4章で検討されている財源は、2005年〜6年については、既存の廃棄物税を活用するとされている。廃棄物税は市内の廃棄物を運搬する業者へ課せられている市税であるが、運搬業者の大半は顧客にその税負担を転嫁しているため、実質的には発生した廃棄物への課税として機能している。この2年間の廃棄物税のうち、年額25万8000ドル(1ドル120円で換算して、約3100万円)が温室効果ガス排出削減プログラムへ配分される。2年間の合計額は51万6000ドルとなり、これは日本円で約6200万円に相当する。51万6000ドルの用途は表2のように予定されている。



 2007年度以降の財源については、計画策定時点では次の5つの方法が選択肢として考えられていた。
 @エネルギー効率化及び再生可能エネルギーに関する企業の設立と料金設定
 A毎年徴収する車両ステッカー税の創設
 B廃棄物税の拡大
 C再生可能エネルギー導入軽減プログラム/ファンドの創設
 D開発行為税の増税
 しかし、これらが比較検討された後、住民投票にかけられた結果、文頭に記したように、各自の電力使用量に課税する「気候行動計画税」が最終的に導入されることになった。
 

■削減効果を定量化した行動勧告

 本計画の末尾に当たる実行計画においては、以下のような行動が勧告されている。まず、ボルダー市における2012年の目標達成に向けて、@既存プログラムの実行を加速し、拡大すること、新たなプログラムを開発すること、A勧告された行動を実施するための長期的な財源を確保すること、B新たなあるいは拡大された政策・プログラムを支える制度基盤の開発、の3項目が緊急とされている。
 行動勧告は、エネルギー効率化、再生可能エネルギーへの転換、交通対策、教育キャンペーンの4分野について定量的な効果とともに示されている。