環境自治体会議環境政策研究所が全市区町村のCO2排出量を推計

 

●温暖化対策の最前線は自治体

 2005年2月に京都議定書が発効し,同3月に『京都議定書目標達成計画(案)』が公表された。達成計画では「特に地方公共団体に期待される事項」との項目があり,なかでも市区町村に対しては,地域住民への教育・普及啓発,民間団体の活動の支援,地域資源を活かした新エネルギー等の導入などと記述されている。
 国内には規模,地理的条件,特性の異なる多数の市区町村が存在し,市区町村こそ温暖化対策の最前線である。しかし,地域全体としての温暖化対策はまだ動き出していない。それどころか,対策の基準となる温室効果ガス*1の排出量の把握もなされていない市区町村が多い。
 小規模の市区町村では,温暖化専任の担当者を配置する余裕もないことが多い。こうした状況から,温暖化防止地域推進計画を策定している市区町村はわずか*2であり,庁舎内や自治体事務・業務での省エネ対策だけでも手一杯という現実がある。そこで環境自治体会議環境政策研究所では,国内の全市区町村ごとに,現状の温室効果ガスの排出量ならびに2010年における予測値を推計し,公開することとした*3。併せて,削減対策メニューとその効果予測についても情報を提供する。

*1:温室効果ガス全体では,二酸化炭素(CO2),メタン(CH4), 一酸化二窒素(N2O), 代替フロン(HFC・PFC・SF6)を指すが,本検討では温室効果ガスの大部分を占めるCO2のみを取り上げている。
*2:2004年10月1日現在で,56市区町となっている(都道府県では44)。出典:環境省資料。
*3:これらは環境省地球環境研究推進費「市町村における温室効果ガス排出量推計および温暖化防止政策立案手法に関する研究(課題番号B-61)」の成果の一部である。  

●中小規模の自治体の対策がポイント

 検討によると,民生部門(家庭・業務)では,人口30万未満の中小市町村(自治体数にして9割以上)が,CO2の半分以上の量を排出していることがわかった。また2010年には,人口が減少すると予測されている市区町村が75%あるにも関わらず,このままのトレンドを放置すれば,96%の市区町村において,民生部門の排出量が増加することが予想される。
 CO2排出量の増加要因としては,民生部門家庭においては世帯数の増加による1人あたりエネルギー消費量の増加や,高齢世帯の増加による在宅時間の増加,それに伴う冷暖房の使用時間の増加などが要因としてあげられる。また業務においては,OA機器の増加による,従業者あたりエネルギー使用量の増加や,従業者あたり床面積の増加による冷暖房の使用面積の増加等である。
 同じく交通CO2発生量についても,人口30万人以下の中小自治体からの排出量が日本全体の68%を占めており,民生部門と同様の傾向を示している。同じく2010年には,75%の市区町村で人口が減少する一方で,世帯あたりの自動車保有台数は増加し,いわゆる「1人1台化」が進展する。このため,新車(燃費の良い省エネ法基準達成車)への置き換わりが予定どおり進展しても,人口が減少する中小都市や農山村部であってもCO2排出量が増加すると予測される。
 

●推計方法と結果

 CO2の排出量は,[活動量]×[排出係数]の基本式で求められる。本報告で推計の対象とした分野は,産業部門,民生(家庭)部門,民生(業務)部門,交通(旅客)部門,交通(貨物)部門である。それぞれの分野について,主要な推計要素を次の表1に示す。


 また図1に民生部門の住民1人あたりCO2排出分布,図2に運輸旅客部門の住民1人あたりCO2排出分布を示す。市区町村はそれぞれ人口が異なるので,排出総量を比較しても要因や対策が検討できない。このため住民1人あたりのCO2排出量として示したものである。なお図の単位は「1人あたり年間CO2トン数」である。


 寒冷地では,民生部門のCO2発生量が温暖地の2〜3倍に達する。これは暖房用エネルギーの必要性から不可避的なものであることは容易に推定されよう。逆に温暖地では冷房の電力が多くなる傾向があるが,暖房ほどの影響はない。
 また交通については,公共交通の発達した大都市よりも,地方都市において住民の移動をマイカーに依存せざるをえなくなり,交通部門のCO2排出が多くなる。このように,地域の条件に対応した対策の議論が必要である。
 ニュースでは紙面の関係から,データそのものを掲載することができない。具体的な数字については環境自治体会議事務局に問い合わせていただきたい。なお会員自治体は優先的にこのサポートを受けることができる。