政策交流会「自治体エネルギー政策のパワーアップ」での注目事例を紹介

 環境自治体会議 政策交流会「自治体エネルギー政策のパワーアップ」が12月5日(金)、大阪府枚方市のメセナひらかたにて開催された。枚方市では現在、エネルギービジョンを策定中。「本日の議論を通して、市民、職員間の議論を活性化し、エネルギー政策の確立へつなげていきたい」との中司宏・枚方市長の開会挨拶に始まり、活発な議論が繰り広げられた。
(文責:環境自治体会議事務局 増原)
 ●プログラム
 対 談
 @ここまできた!自然エネルギー100%地域!!
  中村哲雄(岩手県葛巻町長)
  清野義勝(山形県立川町長)
  進行:中島大(環境自治体会議専門調査員)
 A都市自治体でのエネルギー政策のあり方
  倉田薫(大阪府池田市長)
  中司宏(大阪府枚方市長)
  進行:田中充(法政大学社会学部教授)
 B省エネ―家庭・地域における実践例
  奥野享(とよなか市民環境会議アジェンダ21)
  遠座俊明(大阪ガス)
  小林賢治(関西電力)
  進行:鈴木靖文(ひのでやエコライフ研究所)
 C市民出資と協働事業のすすめ方
  岡田進(神戸「くるくる発電所」副所長)
  鵜野高資(長岡京市環境の都づくり会議代表)
  進行:豊田陽介(京エコロジーセンター)

1.ここまできた!自然エネルギー100%地域!!

◆エネルギー自給で自信と誇りを回復―葛巻町

 岩手県葛巻町は、北上高地の山間地帯に位置する人口9000人の酪農の町。標高1,000mの高原牧場にそびえたつ3本の風車は、すでに町の原風景となりつつある。町では1999年に新エネルギービジョンを策定。その後、袖山高原への風車設置、中学校への太陽光発電導入、畜産バイオマス発電の検討開始などを経て、2003年12月には町内に12基(21000kW)の風力発電が稼動。3000世帯の町にして、17000世帯分以上の電力が供給可能となった。
 自然エネルギー導入のきっかけとなった風車建設にあたり、景観や野鳥への影響を懸念する声が出された経緯にも触れつつ、中村・葛巻町長は「地域の合意形成がまず不可欠」と強調。同時に「電力会社がグリーン電力をより安い単価で入札させるような状況を、国策として変えていくことへの合意がなければ、自然エネルギー政策は進めにくい。グリーン電力の購入などを通じて、クリーンエネルギーの開発を支えてほしい」と参加者に訴えた。
 葛巻町では2000年に「全国風サミット」を開催。全国から500名、町内から100名が参加したサミットは同町にとって過去最大のイベントとなった。「岩手の山村が自然エネルギーの取り組みを通じ、自信と誇りを取り戻した。取り組みの波及効果は町民にとっても計り知れない」との中村町長の言葉に、進行役の中島氏からは、「地域の価値を目に見える形で明らかにしたという意味でも、風車の功績は大きい」とのコメントがなされた。

◆風車と省エネでエネルギー100%自給めざす――立川町

 自然エネルギーで地域のエネルギー需要の100%自給をめざす山形県立川町では、1981年に風力発電の実験事業に着手。しかし、強風が吹くと故障する2つの小型風車の導入は、「日本の風は風力発電に向かない」との評判を生み、その後10年間のブランクをもたらした。その後89年の「ふるさと創生事業」で風車事業化が再浮上、93年にアメリカ製の100kW風車3基を日本で初めて輸入した後、400kW(2基)、600kW(4基)、1,500kW(2基)と合計11基の風車を次々導入。「日本の風力発電の歴史が立川町から見える。大型化と効率性向上により、現在、町のエネルギー自給率は57%(年間電力需要量2200万kWh中1267万kWh)まで高まった」(清野・立川町長)。
 さらに100%達成に向けて需要サイドからアプローチする取り組みとして「町民節電所」の試みも始まっている。町では省エネビジョン策定(2001年度)を経て、町民参加の「町民節電所研究会」を設立。節電所に登録した家庭は前年度比◎%といった形で節電目標をたて、地元商店会の買い物券「フーちゃんチケット」(2000円相当)をもらうというしくみを実現した。「目標を達成した家庭には、チケットをさらに1枚配布する。楽しんで節電ができ、かつ商店街の活性化にもつながるというしくみ」と清野町長。「現在200戸が登録しているが、将来的には町内全1700世帯中、800戸登録が目標。これらの世帯の5%の節電は、600kWの風力発電5基分に相当する」と展望を語った。
 「風力発電が導入されたことによって、町民の意識がどう変わったのか」との中司・枚方市長の問いかけに対し、清野町長は「他の町にないものが我が町にあるという認識が高まった。特に、小学生が風車を作文に取り上げるなど、環境にやさしい風車を誇りに思う意識が育っている」と述べた。
 自然エネルギー導入に意欲的な両町長が懸念するのは、売電への入札制導入だ。1KWあたりの売電単価が9円から6円台にまで下がるなど、発電事業としての存続が危ぶまれる現状に「政策できちんとしたバックアップが必要。でなければ日本の風力発電は頭打ちになる可能性もある」(清野町長)と危惧する発言もあった。

◆都市の特性を生かした省エネを実施―池田市

 大阪府池田市では1999年に「環境にやさしい課」を創設、以降次々と環境政策に着手。そのスタートともなった市民参加の環境基本計画づくりについて、「20人の『エコスタッフ』を公募したところ、16歳〜60歳まで40人の市民から応募があった」と倉田・池田市長は語った。市では同時期に省エネビジョンづくりも始動。2010年までの「省エネ10%実現」を目指し、庁舎のESCO事業をはじめ、地元の自動車製造業と連携したクリーンエネルギー自動車普及のしくみづくりに着手している。
 「運輸部門の10%省エネについては、地元企業との連携で確実な達成が見込まれる」と倉田市長。また、オフィス部門からのCO2削減については、「公共施設が多いという地域特性を生かし、ESCO事業に力を入れている。73年建設の府市合同庁舎の熱源効率改善で29.1%の省エネ、25.3%の光熱水費減が実現した」と具体的な数値をあげての紹介がなされた。さらに府の「Yesマイカーデー」のモデル都市として、毎月19日は末尾が奇数ナンバーの、20日は末尾が偶数の車が、マイカーを自粛する運動も展開しているという。



◆カギ握る家庭・交通の省エネ対策――枚方市

 人口40万人の都市型自治体である枚方市では、2001年のISO14001認証取得を契機に、全庁的な環境政策の取組を開始。翌02〜03年度で地域新エネルギービジョンを20人の公募市民とともに策定している。その過程で地域特性を調査したところ、特に一般家庭のエネルギー消費と自動車関連需要の伸びが1990〜2000年間で54.3%も増加していることがわかったという。「幹線道路が多く通勤ベットタウンとして発展したわが市の特徴が見て取れる。そこで交通政策に伴う省エネ効果を期待し、マイカーの利用の削減と代替策としてのコミュニティバス運行を地元バス会社に働きかけた」と中司・枚方市長。現在、4路線で小型のコミュニティバスが運行されているほか、低公害の天然ガス車の導入促進も進めている。
 エネルギー供給分野では、太陽光発電に力を入れている。すでに公共・産業用のシステムの導入総量は府下の衛星都市で最も多く、水道局の浄水場屋上や消防署の出張所、生涯学習センターへの設置も完了。04年度には市立小学校にも導入を予定している。
 市民への啓発活動としては、全戸への簡易版の環境家計簿の配布のほか、毎年11月には約2万人が参加するエコフェアを実施している。そうした啓発活動が市民に浸透しているのか、大都市ならではの不安もあるが、「いずれはきちんとした指標を立て、効果を測定できるように工夫したい」との展望もある。
 「都市型の自治体に自然エネルギー自給は困難だが、可能な範囲で地域資源を活かしつつ、分散型エネルギーを普及させ、効果的に利用することが大切」と中司市長。さらに「家庭や交通部門の省エネ対策がカギを握る」と付け加えた。それに対し、進行役の田中氏からは「都市自治体はいずれもエネルギーの大量消費地。それだけに、自治体のエネルギー管理者としての力量が問われている」とのコメントが寄せられた。