自治体における建築物の環境配慮対策 各地の事例

 木造の建築物の材料を選ぶにあたっては、その土地の木材がもっとも適しているといわれます。つまり、地場産であれば、温度や湿度の変化に木材が対応しやすいのではないか、ということです。地場産木材を利用するメリットはこうした居住の快適性にとどまらず、域外やましてや外国産の木材を利用するのに比べて、木材の運搬に必要なエネルギー消費が少なくて済む点にもあるといえます。
 そこで、近年、活発化している自治体による「地場産木材を活用した住宅建設への支援活動」はこれらのような点から評価されるべきと考えます。
 こうした支援活動は、低迷する林業の活性化、地域産業の振興や雇用確保を主な目的とする場合が多いといえますが、森林の循環利用や「ウッドマイルズ」の低減など、環境保全対策を前面に出した政策展開も広がりつつあります。今年4月以降の新聞記事などを参考に、ここ最近の地場産木材利用に対する自治体支援の動きをまとめました。

◎岩手県紫波町――町産材利用住宅への補助

 地元材を活用した住宅づくりに対しては、都道府県レベルの低金利融資支援が進む中、今年に入り、市町村レベルでも地元材使用住宅を支援するところが増えてきました。中でも、町産材を利用した住宅建設資金に対する利子補給補助金に加え、固定資産税の軽減措置を盛り込んだ岩手県紫波町の事例はひときわ目を引きます。同町では循環型まちづくり条例を平成13年に制定、その一貫として駅舎や消防屯舎、学校など木造の公共施設建設を手がけてきましたが、公共施設の数には限りがあるため本制度を創設、個人住宅への融資を開始しました。
 同町では、町産木材を「町内で伐採し、かつ、町内で製材した木材」と規定。
@在来軸組工法によって建設されていること、
A構造部分の全てに町産木材が使用されていること、
B町産木材が一戸あたり10?以上使用されていること、
C建設工事は町内に事業所を置く事業者により行われたものであること、
D住宅金融公庫又は住宅建設資金融資機関が定める貸付基準を満たす住宅であること、
のすべての条件を満たす住宅が、融資の対象となります。
 岩手県の実施する、「県産木材利用住宅建設資金利子補給制度(年末残高×0.5%)」も併用可能で、今年度は15棟を受け付けています。
 同様の取り組みは本年度より、岩手県葛巻町、福井県今立町などでも始まっています。葛巻町の支援事業では、町産木材使用の新築や増改築に、一定額が助成されます。地元材をめぐるさまざまな地域の内発的発展をめざすとともに、定住化の促進にも期待を込めているようです。

◎栃木県塩谷町――新築木材住宅に「高原材」を補助

 栃木県塩谷町では、木材の需要拡大などを目的に、地元「高原材」で新築する町内の木造住宅内補助金を交付する制度を7月に開始しました。最高で杉材100本分、30万円の補助金を、町内定住者や定住予定者に交付するものです。
 同事業の名称は「柱100本補助金交付事業」。町は申請を受け付けると、地元の木材組合に依頼し、最高100本相当の町内産の杉柱材を建築主に提供します。建築主が補助金交付を町に申請すると、町は使用状況の検査や建築主の実績報告を経て補助金を交付し、建築主はそこから木材組合に支払うという仕組みになっています。
 これと似た取り組みは、杉材の生産地で知られる愛媛県久万町でも、すでに昨年度から開始されています。定住者を対象に、家1軒分の久万スギをプレゼントするというものでしたが、好評のため今年度もあわせて10名に贈るということです。いずれも地元材のPR効果とともに、製材所や工務店など、地元企業の活性化もねらった取り組みといえます。

◎静岡県――「しずおか木使い県民運動」の展開

 地元材使用への支援制度には、岩手県のほかにも埼玉県、三重県、群馬県等すでに多くの県が取り組んでいます。静岡県では低金利融資制度に、独自の「優良木材認証制度」を組み合わせて、地元材活用促進をねらいとしています。県独自の「しずおか優良木材認証制度」にて認証を得た木材を45%以上利用することを条件に、低金利ローンを500万円まで借入できる制度です。認証制度では、地元材の品質・性能を保証すると同時に、「地域で育った樹木からの生産物」であるとのお墨付きを与えることで、木材に県産ブランドとしての付加価値もつけています。
 県は、林業の振興と中山間地の活性化、森林の多面的機能の発揮等をめざす「しずおか木使い県民運動」を提唱し、ホームページにて県産材住宅建設をアピールしていますが、その中で“ウッドマイル”の概念も紹介しています。“ウッドマイル”とは、木材の産地から消費地までの距離を指します。
 昨今、輸入作物の“フードマイル”に着目した論文やシンポジウムを数多く目にするようになりましたが、熱帯材など地球の裏側から輸送される外材のエネルギーコストに思いをはせつつ、環境負荷の低減という視点から地産地消の取り組みをすすめようという提案です。県の「木使い県民運動」については、「しずおか木使いネット(http://kizukai.pref.shizuoka.jp/)」をご参照ください。

◎ウッドマイルズ研究会も発足

 外国産木材の輸送に伴うCO2排出量を算出しようとの試みも始まっています。国内では熊崎実・岐阜県立森林文化アカデミー学長を会長として、住宅に使用される木材を輸送エネルギーの観点から見直す「ウッドマイルズ研究会」が発足しました。木材産地から消費地までの距離の指標を開発・普及し、国内森林資源の有効活用を促すと同時に、循環型社会構築に寄与することを目指しています。ウッドマイルズ研究会では旧ホームページにて、「家を建てる木材を地球の裏側から輸送するのに必要なエネルギーは、その家を建てるためのすべての部材を作るのに必要なエネルギーに匹敵」するといった試算結果を発表しています。
 
 ●ウッドマイルズ研究会HP
 旧 http://homepage3.nifty.com/woodmiles/
 新(9月18日より) http://woodmiles.net