自治体における建築物の環境配慮対策 (上)

建築物の環境配慮は、省エネ、自然エネルギーの活用、化学物質(シックハウス/スクール)対策、景観・街並み保全などと多岐にわたる。こうした課題について、公共施設だけでなく、個人や事業者の建築物にも自治体が関与するよう求める法制度も出来てきた(2003年の省エネ法改正など)。そこで本号では、公共施設の省エネ策として比較的新しいESCO事業を主に取り上げ、取り組みの成果を住民などに還元していくシステムを紹介する。また、間接的な省エネ方策として、全国各地における地場産木材利用の事例をとりあげる。

●自治体庁舎における省エネの取り組み

 地球温暖化対策として、自治体が率先して取り組んできている事業は自らの庁舎における省エネ活動です。環境自治体会議の年次(全国)大会でも、「1%節電」を掲げて一時は5%以上のエネルギー消費削減を実現し、その削減額を市民の太陽光発電設置に対する助成金などに充てている川越市の事例などが紹介されてきました。
 多くの自治体庁舎で実行されている省エネ行動の内容をみてみると、昼休みの消灯、離席時のOA機器のスイッチオフ、冷暖房設定温度の適正化など、職員個人のモラルに依存したものが多く、「省エネは我慢、辛抱」といったマイナスイメージをもたれかねない状況ともいえます。こうした傾向を脱却するには「我慢しない省エネ」とも言われる「ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業」の活用も検討されて良いはずです。
 ESCO事業を活用すると、例えば、庁舎の照明をすべて省エネ型にする、冷暖房や給湯設備の方式を変える、など設備を改善することで無理なく省エネ効果をあげることができます。さらに、技術革新が進むことで、継続的な改善が行われる可能性も高く、個人行動依存型の省エネがいずれ「頭打ち」になると予想されるのと対照的といえます。

●「我慢しない省エネ」ESCO事業の活用を!

 自治体がESCO事業を活用した事例は、東京都三鷹市(市役所本庁舎、コミュニティセンター)や大阪府、富山県など近年増加しています。ESCO事業は「省エネコンサルタント」と説明される場合もありますが、実態はコージェネの導入を含む場合もあり、省エネに限らずエネルギー利用の総合管理をめざした診断・施工・検証(削減保証)サービスといえます。事業のポイントとしては、以下の5点が挙げられています(ESCO推進協議会HP参照)
  1.光熱費等経費の削減分で改修に必要な経費のすべてを賄う
  2.省エネ効果をESCO事業者が保証する
  3.包括的なサービスを提供する
  4.省エネ効果の検証を徹底する
  5.資産ベースによらない融資環境(プロジェクト・ファイナンス)
 5点目について、日本ではまだそのような環境が整っていませんが、これに関連してESCO事業の方式が2つあることを紹介し、次に自治体財政との関係を考察したいと思います。

●ESCO事業と自治体財政との関係

 2つの方式の違いは、省エネのための改修費用(=ESCO事業者への支払い)を一括して支出するか、将来にわたって分割して支払うか、というものです。以下にまとめてみます。
 @ギャランティード・セイビングス方式
 =いわば「費用一括払い方式」。顧客が設備改修時にその費用全額を支払い、将来の削減分でその費用を回収する。設備の所有権は一貫して顧客が有し、ESCO事業者はエネルギー消費削減を保証する。
 Aシェアード・セイビングス方式
 =いわば「費用分割払い方式」。ESCO事業者が設備改修費を調達し、支払う。当初はESCO事業者が設備を所有するが、その後の削減額の一部を顧客が何年間か返済に充て、返済が終了すると所有権が顧客に移る。
 自治体財政との関連でみると、ギャランティード方式の場合、設備改修を実施する単年度で多額の予算を組む必要があります。将来の削減分をESCO事業者が保証するとはいえ、財政担当部署を説得する必要があります。また、自治体の実行計画に基づいた事業の場合、環境省の補助事業(補助率1/2 地方公共団体率先対策補助事業)が利用でき、費用の回収年数を早めることができます。また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の地域省エネルギー普及促進対策事業の活用も有り得ます(補助率1/2)。
 シェアード方式の場合、自治体の単年度予算原則が壁になります。将来にわたって改修費用をESCO事業者へ返済していくことは「債務負担行為」とみなされ、総務省の通達では建設事業など以外にこれを適用することが禁止されているように読めるからです。ただし、大阪府の場合は、議会の承認を得て、府立母子総合保健医療センターへのESCO事業の適用がなされています。政府補助金については、現状でNEDOのエネルギー使用合理化事業者支援事業などがありますが、自治体ではなく事業者が対象であるため補助率が1/3の場合が多いという難点があります。
 いずれの方式も自治体にとっては一長一短あるのですが、ESCO事業は公共施設のエネルギー管理を専門性を有する事業者へ任せていく方向として積極的に評価できると考えられます。

●ESCO事業の成果を基金として活用〜三鷹市

 自治体庁舎におけるESCO事業の結果として光熱費等が削減できた分を「環境基金」として住民へ還元していく取り組みが三鷹市で検討されています。ESCO事業の取り組みは目に見えにくいですし、事業の成果を自治体の内部にとどめずに、住民へわかりやすく知らせていく意味でも、基金設立は広まっていって欲しい取り組みです。
 三鷹市は平成10年度に市役所へESCO事業を適用した後、翌11年度には「地域新エネルギー・省エネルギービジョン」を策定、12年度の地域省エネビジョンFS(実現可能性調査)を経て、翌13年度には牟礼コミュニティセンターへESCO事業を適用しました(ギャランティード方式)。14年度には、PFI手法による複数施設同時の省エネルギー対策も検討されています。
 「環境基金」の発端は、地域新エネ・省エネビジョンの中で提起された「ES(エネルギー・環境保全)基金」です。ビジョンの中では、光熱費等の削減分を新エネルギー導入資金の原資としてストックし、公共施設・民間施設・市民の太陽光発電及び燃料電池の導入、配送業者・バス事業者へのクリーンエネルギー自動車導入に活用していく方向性が掲げられています。

●まとめ

 公共施設における省エネは職員個人のモラルに依存したものが多かったのですが、今後は「我慢しない省エネ」といわれるESCO事業の活用が検討されるべきと考えられます。ESCO事業の2方式は自治体にとっては一長一短ありますが、いずれにせよ、その成果を行政体内部にとどめてしまうのではなく、住民へ還元していく方向性が望まれます。

(文責:環境自治体会議事務局 増原)
 
 参考書籍・HP
 ●筒見憲三、岩崎友彦、塚原晶大(共著)『エネルギー・マネジメント―ESCO、ESPの潮流―』電気新聞総合メディア局・発行、2003年。
 ●東京都三鷹市   http://www.city.mitaka.tokyo.jp/a002/p018/g09/d01800011.html
 ●大阪府建築都市部公共建築室設備課設備計画グループ「ESCO事業のページ」
  http://www.pref.osaka.jp/osaka-pref/koken/setsubi/esco/ESCO.HTM