屋久島会議 第10分科会「動き出す自治体エネルギー政策」の企画にあたって

●分科会のねらい

 本分科会の主なねらいとしては次の2つが挙げられます。
 @エネルギー政策を脱温暖化政策に不可欠な柱の一つとして位置づけ、両政策のあるべき連携を展望すること。
 A両政策に関連する条例制定や計画策定、予算・推進組織のつくり方など行政手法について、具体例の情報交流を通じて「議論から実践」の段階にステップアップさせること。
 これらのねらいは、単なる理想像の議論を超えて、その理想像を実現させるための具体的手法の提案を参加者で練り上げていくことをも意味しています。以下、本分科会の討論に関係する、環境自治体会議の活動や先進事例等の最近の動向をまとめ、分科会の討議内容を展望してみます。

●環境自治体会議(環境政策研究所)の活動

 環境自治体会議では、これら脱温暖化、エネルギー政策についてこの3,4年の間に様々な活動を実施してきました。今年の前半には、こうした活動の成果を「環境自治体ブックレット」としてまとめていく予定です。ここでは、これらの活動の概要を紹介します。

(1)脱温暖化政策について

 環境自治体会議では、2001年から「脱温暖化都市づくり」プロジェクトを実施してきました。この間、02年5月の全国大会「二ツ井白神会議」にて事務局から「脱温暖化都市づくり10か条」を提案したほか、自治労の「地球温暖化防止政策カタログ集」の作成に協力しました。その後、表1のような「10か条」改定案を検討しています。
 プロジェクト専門委員会の開催実績等は『環境自治体会議 年次報告書』やホームページをご参照ください。

(2)エネルギー政策について

 環境自治体会議エネルギー政策委員会の一部として木質エネルギー部会を99年5月に設立、以来4回の部会を開催しましたが、木質バイオマス利用研究会など専門NGOの活動が活発化したなどの理由から、部会の開催は取り止めました。
 木質エネルギーに限定しないエネルギー政策の議論は01年5月の全国大会「びわこ会議」でエネルギー源ごとの分科会形式で実施しました。さらに、同年11月に京都で「第1回エネルギー政策委員会」を開催、自治体・市民団体のみならず省庁関連機関も参加した議論の場づくりを試み、「二ツ井白神会議」でもエネルギー政策に関する分科会を開催しました。

●脱温暖化政策をめぐる先進的な動き

(1)温暖化防止条例制定へ

 温暖化防止に特化した条例はまだ存在しませんが、京都市では、行政が中心になって、環境基本計画(新京都市環境管理計画)の見直しとあわせて、温暖化防止条例の制定を検討中です。また、熊本市では、「地球温暖化防止くまもと市民会議」が中心となって、市民の立場から温暖化防止条例を提案しています。また、長野県でも検討が進められています(後述)。今年2月17日付けの『読売新聞』では、京都市地球温暖化防止条例制定への動きが報じられました。それによれば、京都市は「地球温暖化防止条例(仮称)」を04年度中に制定することになったとし、具体的には、企業に二酸化炭素排出量の削減計画の策定を義務づけることや、低公害車導入など環境対策支援などが検討されています。

(2)地域レベルの二酸化炭素排出量推計

 現在、地域レベルの温室効果ガス抑制を目的とした計画である地球温暖化防止対策地域推進計画ガイドラインの改訂作業が進められており、都道府県レベルの温室効果ガス排出量の算定方法の見直しや、対策評価の方法などについて検討が進められています。また市町村レベルの温室効果ガス排出量算定手法については、環境自治体会議環境政策研究所が02年度から3年計画で研究を進めており、住宅やオフィスビルの用途別エネルギー消費量の推計については、建築学会に属する研究者が研究を進めています。

(3)東京都「地球温暖化阻止!東京作戦」

 東京都が02年3月に「地球温暖化阻止!東京作戦」を発表してから、自治体レベルでも規制的手法や経済的手段を取り入れていこうという機運が高まっています。その一つは、オフィスなど大規模事業所へ二酸化炭素排出削減計画の提出を義務づけるもので、東京都をはじめ横浜市など複数の都道府県・政令市で実施されつつあります。
 東京作戦は、先駆的な政策提案を行い、活発な議論を広げ国民的なレベルで機運を高めることで、国に実現を迫るとともに、東京でも独自に行動を進めることを意図したものです。この提案をもとに、現在は3つの基本理念と6つの挑戦が「都市と地球の温暖化阻止に関する基本方針」として発表されています。
 このうち「挑戦1」にあたる「大規模事業所に二酸化炭素排出量削減を義務化」のもとになる制度は、都が01年4月に施行した環境確保条例に基づいた計画書提出制度です。条例においては、02年4月から燃料・熱の使用量が原油換算で年間1,500k?以上、または電気使用量が年間600万kWh以上の事業所・管理者に対し、「地球温暖化対策計画書」の提出を義務づけています。都はまた、新築建築物に対し「建築物環境計画書」の提出を義務づけていますが、これは、建築物の熱負荷の低減(建築物の形状・配置、外壁・屋根の断熱、窓部の熱負荷の低減)や自然エネルギー利用、省エネルギーシステム(設備、計量システム、地域冷暖房計画等)の面から3段階に格付けをし、取組・評価書を提出させるものです。また01年4月に改正された自然保護条例においては、建物の新・増・改築時における屋上緑化を義務づけています。都はまたディーゼル排ガス規制との関連で、自動車環境管理計画書の提出も義務づけています。

(4)地球温暖化対策「長野モデル」

 「長野モデル」は02年5月、信州・地球温暖化対策研究会が発表したもので、同年5月の第一次提言書では、10年までに温室効果ガス16.2%削減(90年比)を目標に、7つの数値目標を含む約20の対策が掲げられていました。それらの対策は@信州らしさを極めてゆく中で見えてくる脱温暖化社会、Aライフスタイルの転換を促す新しいシステム創り、B削減こそ企業益・地球市民益との認識にたった産業活動、C県全体で脱温暖化施策に取組み、確実な実施を推進するための体制の4テーマに集約されています。
 この提言を受け、県は環境審議会に地球温暖化対策専門委員会を設置し、県外の専門家も含めた議論を委員会だけでなく、公開のML(意思決定は行わない)でも展開しています。また、2002年12月には企画局内に地球環境室を設置し、同専門委員会の運営のほか、以下のような業務に対応しています。
 ・「地球温暖化防止県民計画」の策定及び実施
 ・部局横断の「地球温暖化対策検討チーム」の運営
 ・ 地球温暖化防止条例(仮称)の検討 など。

●自治体エネルギー政策の確立に向けた動き

 2002年度までに、全国およそ6分の1の自治体が地域新エネルギービジョン(以下、新エネビジョンと略)を策定しました。また、風力発電や木質バイオマスなど地域特性を活かした自然エネルギーの導入に「まちおこし」として取組む自治体も増えています。こうした中で、本分科会では、自治体エネルギー政策のあるべき姿を考えてみたいと思います。

(1)新エネルギービジョンの策定

新エネビジョンはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が策定費用の100%を自治体等へ補助するというしくみで進められてきた事業です。年度ごとの策定自治体数は以下のようになっています。
 新エネビジョン策定を都道府県別にみると(平成14年6月現在)、今回の開催地である鹿児島県内の策定自治体が51、策定自治体率が5割以上と抜きん出た実績になっています。そこで、県は市町村との関係においてどのような役割を果しているか、も興味深い論点だといえます。

(2)新エネビジョンの実績評価調査

 このように策定自治体が増えてきた新エネビジョンについて、その策定後の実績はどうなっているか、また実績の評価手法はどうあるべきか、ということを明らかにしようとする調査事業が02年度NEDOから環境自治体会議環境政策研究所へ発注されました。
 この調査事業は大きく分けて3部分から構成されます。@策定されたビジョン報告書そのものの調査、A全策定自治体へのアンケート調査、B策定自治体への現地訪問調査です。
 03年3月にはこれらの調査の中間結果を踏まえて、自治体関係者、エネルギーに関係する市民団体・NPO、環境系コンサルタント、エネルギー事業者、NEDOを交えた討論会も実施しました。
 討論会での議論等を受け、本分科会では、自治体がエネルギー・ガバナンス構築(エネルギー供給を担う主体を従来のエネルギー事業者だけでなく、自治体、住民らも含めたものとしてとらえ、それら主体のエネルギー供給活動を、地域エネルギー需要を満たす観点から調整すること)への関与のあり方について、条例・計画・予算といった行政手法及び住民参加を切り口として考えていきます。特に、昨今の自治体財政の危機的な状態を考慮し、自然エネルギー導入の財源をどのようにつくるかという事例発表を鹿児島県中種子町にお願いします。

(3)省エネ法の改正

自治体主導の温暖化対策としてもっとも期待されている家庭・業務部門での取組みの中でも、省エネ対策は大きな位置を占めるといえます。
 そこで、最後に、省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)改正によって自治体が新たに手にする権限をどう活かすか、について議論したいと思います。
 省エネ法の改正は02年6月に公布された内容ですが、03年4月1日から施行されます。この中で自治体に大きく関係するものは、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」第15条関連の改正です。
 第15条の「所管行政庁」は従来「国土交通大臣」だったところが変更され、以下のとおりになります。
 @ 建築主事を置く市区町村の長
 A その他の市区町村の場合は都道府県知事
 B ただし、建築基準法第97条の2第1項又は第97条の3第1項の規定により建築主事を置く市区町村内の政令で定める建築物については、都道府県知事。
 また、第13条は、建築主の省エネ努力について述べた条文です。
 政令もあわせてみると、要するに、特定建築物(2000u以上の住宅以外の建築物)の建築主に省エネルギー措置の届出が義務づけられ、あわせて、国土交通大臣から所管行政庁(建築基準法に基づく建築主事を置く市町村長等)に建築物に係る指導及び助言等に関する権限が委譲されたということになります。
 
 
 ●このように、論点は盛り沢山ですが、今後の自治体環境政策の運営には、欠かせないトピックを議論します。みなさまのご参加をお待ちしております。
 
 文責:環境自治体会議事務局/増原直樹