自治体をめぐる環境コミュニケーション

1.環境コミュニケーションとは?

 近年、自治体について住民など利害関係者に理解と協力を得ることの重要性が高まっています。市民との協働作業からさらなる信頼を醸成し、地域政策を発展させていく時代が到来しています。市民参加型での環境基本計画などの策定が進み、環境政策以外でも自治体政策の形成・実施において、パートナーシップの重要性が理解されつつあります。
 このような企業や自治体における環境政策についてのやりとりされる情報を「環境情報」と呼びます。環境情報の利害関係者との様々なコミュニケーション(下図参照)については、次のような「環境コミュニケーション」という理念があります。
 「 環境コミュニケーション :環境保全活動等に関する情報を一方的に提供するだけでなく、 利害関係者の意見を聞き、話し合うことにより、互いの理解と納得を深めていくこと。 」
  この考えに従って、環境情報の告知の手法や 「受け取る者」とのより効果的なコミュニケーションが、企業や自治体で試行錯誤されています。(下図参照)
自治体の環境政策推進のためには、住民・企業ひとりひとりの行動を変える必要があるので、 市民参加やパートナーシップの重要性が高まっています。参加及びパートナーシップに伴って
  @その基礎となる情報の共有、
  Aそれらの情報を受けた住民・企業からのフィードバック、
という 環境情報の双方向のやりとりが必要で、これが円滑に行われるよう問題を見つけ解決し、より適切なコミュニケーション形態を作り出し、実行していくことが課題といえます。

2.環境コミュニケーションの重要性

 国立環境研究所の調査(1998)によれば、日本人一般市民が、「環境問題については私たち一人一人が加害者である」と約80%の人が答えているのにもかかわらず、「環境問題についての知識が豊富である」と答えた人が10%のみという回答状況のようです。日本の一般市民の環境への危機感は、ドイツと変わらないほど高いのですが、環境保全のための行動をしたくてもその知識・情報が、ドイツではあり、日本ではほとんどないということが、調査結果から判明しています。
 この原因のひとつは、日本では企業や自治体など環境情報の提供側に先ほどの「環境コミュニケーション」の概念が浸透していないことです。例えば、自らの環境保全をめざした取組みの成果を報告するというアカウンタビリティ等の履行だけにとどまり、住民とのコミュニケーションの向上は優先順位が低い場合がそれにあたります。
 この背景として、情報提供側に2つの問題があると考えられます。@直接的に成果が得られにくい仕事なので組織の中で優先順位が低いこと、A受け手にとって分かりやすい情報、分かりにくい情報の違いを把握していないこと、です。
 この問題が各組織で認識され、住民の理解と納得を深めていくために環境情報がわかりやすい形で伝達されることができれば、一人一人が環境保全への意識を高めることが可能になっていきます。市民が一方的に知らされるだけでなく、市民側で環境情報を利用したり、学んだり、意見を述べたりすることができなければ、情報の有用性が高いとはいえないのです。

3.環境情報の表現方法

 このように、双方向での環境情報のやりとりが重要になっていますが、そのためには、どのような表現方法があるのでしょうか。
これまで、都道府県を中心に多くの自治体では、『環境白書』などを定期的に発行してきましたが、環境基準に従った数値の一覧表や一般的な環境問題の解説だけでは、前述の「環境コミュニケーション」が成立するためには十分ではありません。
@市民参加型の環境調査など、市民からのフィードバックを受けることができ、双方向であること、
A環境情報の一覧表をグラフ化し、基準値との関係を明示したり、経年変化を表現することで、データの意味することを分かりやすく表す、
B地図情報などを利用して地域特有の課題を把握する、といった工夫が必要といえます。
 後者の、地図を利用した環境情報の表現及び環境コミュニケーションの例としては、「環境マップ」の取組みが全国各地で増えてきました。環境マップは、主に地域の環境に関する調査の結果を地図上に示すことで、環境の現状をビジュアルに表現し、将来の環境保全に役立てることをねらいとして作られています。その事例をいくつか挙げながら、環境マップの作成ポイントや課題をみていきます。

4.環境マップの事例

 江別市、佐原市、日野市、大阪市、広島市、水俣市など多くの自治体の環境マップは、市役所だけでなく、市民による情報収集と調査に基づいて作成されていることがわかります。佐原市の不法投棄(野焼きも含む)位置図は、市役所の責任で掲載されているものの、もともとは市民からの通報によって判明した不法投棄も含まれます。このように、ポジティブな情報(保全したい自然)だけでなく、ネガティブな情報(公害等の苦情)も発信していくことには、情報伝達に加えて啓発の役割もあるといえます。

5.環境コミュニケーションの今後

 まとめると、今後の環境コミュニケーションのあり方について、次に挙げるような@〜Bのような問題点が挙げられます。そして、その解決のために、A〜Cのような方向性が望まれます。
問題点:
  @一方的な情報提供で、フィードバックを受けるしくみを整えていない。
  A『環境白書』のデータ一覧表といった形式では、意味がわかりにくい。
  B環境問題が自分の地域の問題であるとの認識、
    または地域特有の課題の把握がさらに必要。
      ↓
解決の方向性:
A 環境情報を媒体とした参加・パートナーシップ:環境保全活動等に関する情報が(例えば市役所から)一方的に提供されるだけでなく、利害関係者(住民等)の意見を聞き、合意形成をはかっていくこと。
B 情報の表現方法:情報を「提供する者」と「受け取る者」とのより効果的なコミュニケーションのために、グラフ化、地図・ポンチ絵などのビジュアル化、ベンチマーキング活用等の工夫が必要。例えば『環境白書』の改善。
C 環境マップの活用:ホームページでの公開にさまざまな効用。ポジティブな情報で政策展開、ネガティブな情報も啓発に利用。

(文責:黛陽子/環境自治体会議事務局)