水俣市版環境ISOの取り組み 〜住民協働の環境モデル都市づくり〜

1 はじめに

 水俣は、世界に類例のない産業公害で、約半世紀の間、塗炭の苦しみを経験した。しかし、その苦しみと混乱を乗り越えて、住民協働で新たな水俣づくりを行っている。

 1990年から「環境創造みなまた推進事業」を展開し、地区懇談会やワークショップ等を数多く開催して「水俣病の犠牲を無駄にしないまちづくり」について話し合いを行った。その結果が、環境で破壊されたまちだからこそ環境で立ち直るということであった。

 1992年に「環境モデル都市づくり宣言」を行い、行政の取り組みは環境を柱にした政策に大きくシフトし、総合計画や環境基本計画など環境に配慮した計画を策定した。しかし、計画の進捗状況や成果及び問題点を把握する指標がなかったため、ISO14001のPlan−Do−Check−Actionのシステムに着目し、計画を適正にマネジメントしていくように1999年2月に市役所が認証取得を行った。

2 水俣市のISO14001

 市役所がISO14001を認証取得した目的は、市が掲げた「環境モデル都市づくり」をマネジメントすることである。つまり、市役所を自動車に例えると、ISO14001は国際運転免許証であり、この自動車に職員が乗り込み、排気ガスを抑えて「環境モデル都市」に向かって進んでいくことである。

 ISO14001を認証取得してから、市役所の省エネ・省資源の削減効果は、4年間で約2,500万円の経費削減につながっているが、このことはむしろ副産物であり、それ以上の効果は、市民が水俣市オリジナルの環境ISOの取り組みを始めたことである。水俣市版のそれぞれの環境ISOも、本規格と同じく認証の有効期限は3年間で、1年に1回定期審査を実施しているが、審査は市環境対策課が事務局となり民間団体等と協働で実施し、認証は市長が行っている。

3 我が家のISO(家庭版ISO)

 水俣青年会議所と協働で、環境にいい暮らしづくりを話し合い、ISO14001のシステムを参考にして「我が家のISO」の取り組みを進め、現在85世帯を認証している。

 各家庭は、あらかじめ用意された35項目の行動項目から5項目以上を選んで宣言し、3ヶ月間記録をした後、審査を受けて、認証を受ける。その後も行動と記録を継続し、1年に1回見直しを行っている。家庭で取り組む上での一番の課題は、記録を行うことである。以前から環境家計簿等があったが、定着しなかったため、記録用紙はできる限り簡素化した。

 取り組み家庭の成果として、エネルギーの削減率が最も大きかったのが電気使用量で、以下に水・灯油・ガソリン・LPGと続く。しかし、一番の成果は、家族みんなで役割を分担し、家庭内で省エネ・省資源やリサイクルなど、環境にいい暮らしに関する会話が行われて、意識の高揚が図られたことである。

4 学校版環境ISO

 学校で、水俣市の海、山、川、それに大気を守り伝えていくために、二酸化炭素の削減、資源の有効活用、環境負荷の軽減、環境保全など、環境にいい学校づくりに関する行動を宣言し、それを記録し、必要に応じて見直していくシステムを認証する制度である。

 市内全小・中学校(16校)の児童・生徒(3,000名)と先生が、「学校版環境ISO」のシステムをつくり行動している。現在では、児童・生徒会活動の中にISO委員会が誕生し、各クラスの取り組み成果を表やグラフにしてISO掲示板に掲示したり、標語やマスコットを募集して積極的に行動している。また、給食の残菜を堆肥化して花壇に利用したり、環境カルタを作成したりして、各学校の取り組みは大きく広がっている。以前は水俣出身と言えなかった子どもたちが、現在では環境に取り組む郷土水俣として誇りに思っている。この「学校版環境ISO」は、保育園・幼稚園にも広がっている。

5 旅館・ホテル版環境ISO

 水俣病の経験と教訓の発信や環境への取り組みをはじめてから、多くの視察者や修学旅行生が水俣市を訪れてくれるようになった。幸い、水俣市は地理的に交通の便が良いところではないため、県外からの来訪者は宿泊を余儀なくされる。このことから、旅館・ホテルの宿泊客が以前より増加するようになり、思わぬ経済効果を生み出した。

 宿泊客の多くが、環境意識の高い方や環境関連の専門家であるため、旅館・ホテル側から市役所に対して、「せっかく宿泊して頂くのに、旅館・ホテルが環境に配慮していないのは恥ずかしい。環境に配慮した取り組みを是非はじめたい。」との強い要望があった。この要望を受け、「旅館・ホテル版環境ISO」がスタートし、現在4施設を認証している。

 「旅館・ホテル版環境ISO」の困難な点は、環境に配慮した取り組みがサービスの低下につながってはいけないということであるが、どの施設も、まずは従業員の環境意識の向上に努め、お客に対しては、客室のマッチを無くしたり、省エネタイプの蛍光灯を導入したりして、できることから取り組んでいる。

6 畜産版環境ISO

 牛海綿状脳症(BSE)の国内での確認により、水俣市内の畜産農家においても、出荷できないなどの深刻な影響が出たため、自然環境に配慮し、安心・安全な環境にいいものづくりを進める「畜産版環境ISO」を創設した。

 「畜産版環境ISO」は、環境・健康にいいものづくりに向け、行動を宣言し、役割を分担し、記録し、見直して新たな行動へつなげる継続的な改善を行っている畜産農家を市が認証する仕組みになっている。畜産農家は、省資源・リサイクル、省エネルギー、化学物質不使用、廃棄物管理、汚染関係、環境保全の31項目から5項目以上を宣言し、行動する。また、地元で作られた飼料の使用も推進している。

 現在、酪農・肥育、養豚、養鶏の3農家を認証しているが、今後は、市内精肉店との契約支援と生産者の顔の見える直売店の整備を進めていく。

7 これから

 「水俣市版環境ISO」の取り組みをはじめてから様々な発見と相乗効果があった。そのひとつとして、各家庭や各学校等の特色を活かした環境への取り組みは、郷土「水俣」を大切にすることであり、地域づくりにつながっていることが挙げられる。「水俣市版環境ISO」もISO14001と同じく、継続することに意義がある。そのために、これからは審査方法等のシステムを見直して維持に努め、新規認証を行っていくために、市役所のISOの目的・目標に掲げ、マネジメントしていく。また、それぞれの取り組みを連携させて、更に「住民協働の環境モデル都市づくり」を進めていきたいと考えている。

水俣市のウェブは  http://www.minamatacity.jp/

相思社のウェブは  http://www.fsinet.or.jp/~soshisha/

 

問合せ先:jimukyoku@colgei.org