「地球温暖化阻止!東京作戦」の開始について〜経済的手法の導入提案と展望

 歯切れの悪い国の温暖化対策に業を煮やした東京都は自ら「東京作戦」を宣言。ディーゼル車No!作戦と同様、国へ政策の見直しを迫りつつ、住民・事業者のライフ(ビジネス)スタイルの変革もねらう。その目標と展望を概観する。  寄稿:東京都環境局総務部企画課

●作戦開始の背景

 本年2月20日、石原知事は、先駆的な政策提案を行い、国民的なレベルで機運を高めることで国に温暖化対策の強化を迫り、同時に東京でも独自に行動をすすめる「地球温暖化阻止!東京作戦」の開始を宣言した。

 私たちにとって一番身近な、生存の基盤である地球の環境悪化の進行は、人類の存在そのものが問われる状況にまでいたっている。地球温暖化対策とは、歴史的認識をもって取組むべき課題であるにも関らず、我が国における温暖化対策の立ち遅れが非常に甚だしく、もはや座視できる状況にはない。これが、東京都が本作戦を開始した背景である。温暖化対策には国の役割が決定的であるが、国が自らの責任を果たしているとは到底みえない状況にある中、東京には、日本の首都として、自ら行動する責任があると考えている。

●東京作戦の目標と5つの政策提案

 本東京作戦の目標は、@活発な議論を巻き起こし、我が国の地球温暖化対策の強化を実現する、A先駆的な事業者やNGOとの連携を進めて、実効性のある施策を開始し、東京を先進の省エネルギー型都市に変えていく、B自然エネルギー、省エネルギー製品・技術の開発普及で、環境産業の拡大をめざす、の3点にある。

 この目標を踏まえ、今後、特に対策の強化が必要な、業務、自動車、家庭部門でのCO2排出量の削減をめざし、次の5つの政策を提案した。

  提案1:オフィスなど大規模事務所へ、CO2排出削減を導入

  提案2:「CO2削減証書」市場の創設で、風力発電や森林再生を促進

  提案3:新建築物に、太陽光発電など自然エネルギー利用を義務付け

  提案4:自動車の燃費基準を強化、拡大

  提案5:電力多消費型製品は、買わない、売らない、作らない

●事業者、都民、都の行動(地球温暖化阻止!東京作戦の7つのアクション)

 地球温暖化対策をめぐる議論と行動を活発に進めるため、@インターネット討論会や、A自らの事業活動によるCO2排出量の把握とその排出抑制等を求める、国内初の「地球温暖化対策計画書」制度の本格実施、B「CO2削減証書」市場創設プロジェクト、C省エネ・新エネ商品市場拡大キャンペーンなど、7つのアクションを実施する予定である。なお、本年3月に実施したインターネット討論会(4月1日で終了)では、都内外から150件を超える意見がよせられた。5つの提案に関する意見の他、温暖化対策全般に関する意見など、具体的かつ幅広い意見があり、今後、政策案を実効性のあるものとしていくための検討素材となるものであった。

●「CO2削減証書」と市場創設に関する構想について

 本作戦では、CO2排出削減の実効性を高めるため、ひとつの経済的手法を提案している。大規模事業所に対しCO2排出量の総量削減に向けた一層の省エネルギー化を求める(提案1)が、省エネ化だけでは対応しきれない場合も想定される。これに備え、風力発電などの自然エネルギー開発によるCO2削減量や森林再生によるCO2吸収量を「証書化」し、その取引で、排出削減義務者に課せられた削減量への補充を認めようとするものである(提案2、図参照)。これにより、風力発電や森林再生などのCO2削減プロジェクトに、別の経済的価値を与えることが可能となるとともに、排出削減義務者側としても、CO2排出削減をより費用効果的に実施することができることとなる。

 この提案は、京都メカニズムのひとつである排出量取引の一種(国内排出量取引)ということができる。我が国においては導入は先送りされようとしているが、英国では本年4月から排出量取引が開始され、民間ベースにおいても、シカゴでは「シカゴ・クライメイト・エクスチェンジ」という市場が創設されようとしている。京都議定書は、国内対策での削減を基本にしているが、本提案が実現すれば、日本国内の温暖化対策の実効性を高めることができると確信している。

 この提案を具体化するためには、実際にこの市場に係わっていく可能性のある企業やNGO等との連携は欠かせない。このため東京都では、本年4月より8月頃まで、CO2削減量の証書化や排出量取引について検討を開始している先駆的な企業や、イギリスの排出量取引の仕組みに詳しい監査法人、金融機関、NGOと共同でワークショップを開催することとした(「CO2削減証書」市場創設プロジェクト)。市場の仕組みが、@国内のCO2削減に資するもの、A透明性のあるコストの低いもの、B国際的にみても先駆的なものとするための具体的事項について検討するものである。

 ワークショップでの検討結果を踏まえて、国に対して第1ステップ(2002年〜2004年)での「CO2削減証書」市場の創設を求める提案書をまとめるとともに、東京における証書の先行的活用についても合せて整理する予定である。

●今後の展望

 東京都の政策提案は、「今後、導入が必要と考えられる施策を提起」したものであり、京都議定書の目標達成を考えるならば、本来国が自分で立案して、実施すべき当然の施策と考えている。

 このため、これら5つの提案を含め、まず東京において、さらに首都圏において、そして日本全体において、どんな温暖化対策を進めるべきかについて、9月末まで活発な議論を繰り広げ、世論の形成を進める中で、国に強力な地球温暖化対策の実現を求めていく。また、国がやらない場合には、5つの政策提案を更に練り上げ、都としての政策化の方向を定め、都の権能を最大限に活用して、先駆的な企業との連携や国への要請、条例化などの方法で、実現を図っていく予定である。

 地球の温暖化は、東京の施策だけでは阻止できないが、私たちは、地球と人類の存続の危機という歴史的な認識をもち、まず東京から、その第一歩を踏み出したいと考えている。

 インターネット討論会や「CO2削減証書」市場創設プロジェクトなどで繰り広げられた議論、ご意見、ご批判等など、こうした多くの皆さんの参加こそが、我が国の地球温暖化対策を進める大きな力になると考える。今後とも、日本の温暖化対策の強化に向けて、本作戦への皆さんの積極的な参加とご協力をお願いし、力を合せて、地球温暖化対策の強化にむけた大きなうねりをおこしていきたいと考えている。

※ 「地球温暖化阻止!東京作戦」については、東京都環境局のHPをご参考ください。

東京都環境局HP(http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw

問合せ先:jimukyoku@colgei.org