「市民」による環境監査
―水俣市のエコショップ認定制度から考える―

 省エネルギーやごみ減量など環境に配慮している小売店を「エコショップ」として認定する制度は、全国各地にある。しかし、水俣市の制度の場合、市と婦人会などの16団体・個人約3300人の代表で組織される「ごみ減量女性会議」が認定プロセスに関与している。エコショップ認定に第三者組織による審査が入る意義や今後の可能性を考えてみた。

◆エコショップ認定のプロセス

 水俣市のエコショップ認定制度は1999年3月にスタート。小売店を対象に16項目(別表参照)を配慮している店舗を増やすのが目的。現在は16項目中、4項目以上が該当していれば認定されるが、将来的には16項目すべてをクリアすることをめざす。2000年1月現在、エコショップに認定された店舗は13とのこと。

 認定のプロセスは、以下のとおり。

  1. 市長あてに認定申込書を提出。申込書には別表が書かれ、取り組んでいる内容に○をつけるようになっている。
  2. 16項目のうち4項目以上該当していれば、審査の第一段階は終了。
  3. 審査の第二段階は、「ごみ減量女性会議」による現地審査。店舗の規模に応じてごみ減量女性会議のメンバーが申し込みをした店舗に赴いて申込書に○が付いている項目をチェックする。「だいたい1店舗2〜3人の方が、一日かけてインタビューなど項目ごとに細かく審査します。必要に応じて領収書などの書類までみることもしています」(水俣市環境課)。
    審査に携わるメンバーはあらかじめ必要事項についての教育を受けるほか、審査は項目ごとに作成された評価規準で行われるという。
  4. 現地審査の結果は市の環境課に報告され、認定を判断する。
  5. 認定されると市長より市長名の入った認定証、ステッカー(別図)、ポスターなどが手渡される。ステッカーは店頭などで16項目の該当している項目ごとに貼られるため、買い物に来る市民はどの項目でこの店がエコショップの認定を受けたかを確認できる。
  6. 認定は3年間有効だが、1年に1回、認定項目の状況の確認がごみ減量女性連絡会議のメンバーによってなされる。
  7. 4年後、再申込を行い合格すれば認定証は新たに発行される。

 このプロセスのうち(3)から推察するに、厳密ではないにせよ、ごみ減量女性会議の審査は「環境監査」といえるだろう。しかもISO14001のようなマネジメントシステムの審査ではなく、取り組みそのものの現状や達成状況などのパフォーマンスの審査を行っている。限られた項目ではあるが、パフォーマンスの審査を認定を受ける店舗と直接利害関係のない外部団体が審査するという仕組みが水俣市のエコショップ制度にはあるということである。業界団体ではなく、外部団体の審査を組み入れた仕組みになったのは、市長による認定の制度、かつ市も構成団体であるごみ減量女性会議が審査にあたるか らであろうか。それとも水俣市の小売店の意識の高さなのであろうか。

 このようなチェックのプロセスであれば、小売店だけではなく学校の省エネルギーやリサイクル、生物多様性などの環境監査を学生が行うといったスキームも水俣市ならすぐできそうだなと、話を聞いて感じた次第だ。ちなみに、スウエーデンやデンマークでは環境NGOが小学校などをエコスクールとして認定するスキームがある。

◆イギリス・チェシャー郡のエコ監査21

 ところで私はここ数年、機会をみつけてイギリスの自治体の環境マネジメントや環境監査を聞き取りしている。昨年3月訪れたチェシャー郡(リヴァプール市の南)のエコ監査21というプロジェクトが、市民による環境監査の可能性を示唆している。

 エコ監査21は専門職あるいは専門集団ではなく一般市民による監査である。「エコ監査21の目的は、環境問題への市民意識の向上」(チェシャー郡環境計画サービス課のジョン・ピアソン氏)。

 このプロジェクトに参加したい市民はボランタリーに監査人の教育・訓練を受け、地域内の事業所や大学等のサイトの環境監査を行政担当者と連携をしながら実施する。監査を受ける組織は監査の費用を支払う必要はない(無料で実施されている)。

 監査の基準は多様なセクターの人々から構成されているチェシャー郡サステイナブル・チェシャー・フォーラムで設定している。守秘義務契約を交わすので、監査結果は書式にのっとったシンプルなものが公表されるのみである。

 またエコ監査21の年度目標や全般的な監査実績などはA4判裏表1枚のニュースレターで図書館などにて配布されている。

 この話を聞いた時、ISO14001の第三者審査のような資格要件にのっとった監査人、専門職による監査とは対極的と感じた。地域住民は監査の信頼性という点から、このプロジェクトをどう評価するのか気になるところだ。

 企業の環境監査は企業秘密保護が不可欠であり、市民による環境監査は不可能に近いスローガンではないかと思っていた。しかし、このエコ監査21のように守秘義務契約を取り交わすことができるなら、可能になる。いわれてみればこの発想は違和感がないが、私には「コロンブスの卵」であった。

◆市民による環境監査の可能性

 環境監査が財務監査の流れから派生した言葉であることによるのか、会計士や環境審査員などの資格をもった専門職によって確立された審査規準にもとづき客観的な証拠をチェックする、誰がやっても同様な結果となる仕事という色合いが強く、素人がおこなうものではないと思われている。しかし一般市民は素人なのだろうか。大学関係者、高校の教師、企業OB、市民団体スタッフなどなど、環境に関する知識や経験を積んだ市民も多い。

 実は、市民による環境監査の提唱は、日本ではおそらくアースデイ日本・東京連絡所ほかが1992年、「あなたのまちのエコチェック」で初めて行った。このパンフレットでは市民が環境監査をするチェックリストが紹介されている。

 水俣市のエコショップ認定は、「いまのところ他の市民団体をこの審査のプロセスに参加する予定はない」(水俣市環境課)とのことだが、市民による監査チームが企業や自治体を監査する可能性がゼロではないことを示唆している。市民を内部監査チームや外部監査委員会の委員に入れる可能性なら、実現可能性はもっと高そうだ。

 環境監査は誰が行うべきか、あるいはどのようになされるべきか、何を監査すべきか、さらにはこのようなプロセスに「監査」という言葉は適切なのか等々、環境監査には考えたい課題が多い。水俣市のエコショップ制度やチェシャー郡のエコ監査21の取り組みはこれらの課題を考えるのに良い材料を提供してくれる。まだこの他にも良い材料となる事例はあるかもしれない。また、環境自治体会議でも提案できるかもしれない。続報を近い将来、報告できるようになりたいものである。

(文責:角田季美枝/環境自治体会議事務局)

(別表)水俣市のエコショップの認定項目

    〈省資源の推進(ごみ減量)〉

  1. 簡易包装の推進
  2. 食品トレイの削減
  3. お買い物袋の利用促進
  4. レジ袋の削減
  5. はかり売りの推進
  6. 〈リサイクルの推進〉

  7. 有機資源(生ごみ)のリサイクル
  8. 再生紙の利用
  9. トレイなどの回収
  10. 段ボールや古紙のリサイクル
  11. その他資源化
  12. 〈環境にいい商品の販売〉

  13. リサイクル製品の販売
  14. エコマーク商品などの販売
  15. 有機、減無農薬農産物の販売
  16. 〈省エネルギーの推進〉

  17. 節電などによる省エネルギーの推進
  18. 燃料使用量の削減
  19. 〈その他の取り組み〉

  20. 環境に関する社員研修の推進