東京都の環境交通政策から考える
〜「自動車使用に関する東京ルール」編

 東京のような大都市においては、渋滞が原因の経済的損失、また健康被害の甚大さが、自動車の使用を抑制し、公共交通機関や自転車への交通手段のシフトを促進させる理由となっている。しかし、大都市以外の地域においても、渋滞に起因する局地的な大気汚染や健康被害とは無縁ではないだろう。そこで、最近になって全貌が明らかになってきた東京都の環境交通政策の成り立ち、内容を概観することで、大都市以外においても有効と思われる取り組みを探ってみたい。

 東京都の自動車公害対策といえば、石原知事も積極的にメディアへアピールしている「ディーゼル車NO作戦」が真っ先に思い浮かぶかもしれない。しかし、環境配慮型の交通システムの観点からは、こうした「アドバルーン」だけではなく、前知事時代から地道に検討されてきた「自動車使用に関する東京ルール」や「TDM(交通需要マネジメント)東京行動プラン」などにも注目する必要がある。

◎パートナーシップ組織による「ルール」づくり

 1999年12月、「自動車利用に関する東京ルール」がまとめられた。この「ルール」の検討は「環境パートナーシップ東京会議」のもとに設置された専門部会「自動車利用に関する東京ルール検討会」において行われた。「東京会議」は、一般公募の都民、環境学習リーダーの他、環境NGO、教育関係、消費者、農林団体などの民間団体、関連業界やJR東日本などの事業者団体、行政機関から構成され、「検討会」は学識経験者4名、一般公募を含む都民4名、消費者団体等から5名、事業者団体から10名によって構成された。なお、「検討会」には省庁、首都高速道路公団、都の関係各部から計15機関がオブザーバー委員として参加した。

 検討会は1998年12月の第1回を皮切りに、計6回開催され、ルールのほか、低公害車の普及策や環境負荷の抑制については重点的な討議がなされたようである。また、検討会と並行する時期に「自動車使用に関する東京ルールを考える会」が結成され、消費者、環境関係団体内における合意形成への取り組みもなされた。

 「ルール」策定の基本的な考え方としては、自主性が強調されている。都民(在住者だけでなく、都内への通勤・通学者、観光客も含む)や事業者が「自主的に、環境負荷が少ない自動車使用を」実現することがめざされているのである。ルールの内容は3つに分かれている。@自動車の使用を減らすA低公害な自動車を使用するB環境にやさしい運転などを行う、の3点である。中でも、注目すべき取り組みについて以下に述べてみる。

◎優良認定事業者とのグリーン取引

 「グリーン取引」とは検討会で造語されたものと思われるが、都が認定を制度化する予定の「優良認定事業者」を優先させた取引のことである。行政に限らず、都民や事業者も物品の購入や配送依頼にあたって、取り組むべきであるとされている。行政は認定だけでなく、顕彰や公表の制度もつくって推奨していく予定となっている。なお、認定は低公害車の使用や走行量抑制などを進める事業者が対象となる。

◎TDM施策に関する条件整備

 TDM施策の体系は、表1のようになっている。「TDM東京行動プラン」の検討も並行して進んでいたため、両者で連携し、整合性をとる形になっているのである。TDMに関して、行政が整備していくものとしては、駐輪場やレンタサイクル、共同集配場などが挙げられている。

TDM施策体系

主な施策 施策の例示
交通需要を調整する手法の推進 公共交通への転換 乗り換えの利便性の向上
パーク・アンド・ライドの検討
交通の円滑化 道路交通システムの高度情報化
駐車場整備や路上駐車抑制などの駐車マネジメント
企業所有車の自宅持ち帰り自粛
物流拠点整備や路外荷さばき場整備などの物流対策
自転車利用の抑制 ロードプライシングの導入(経済的手法による抑制。徴収料金は、交通の円滑化や環境改善に利用)
交通空間に人間性を生かす施策 「自転車利用に関する東京ルール」の展開
自転車道路網・駐車場整備などの自転車活用策
協働のしくみづくり 都民参加方式の充実、都庁の率先実行
道路の整備 環状線等の道路整備、交差点改良等
公共交通機関の整備 幹線公共交通機関の整備・利便性の向上

出典:自転車に関する東京ルール