連載「エネルギー政策の現場から」

温暖化防止対策の効果を測る
〜屋久島における温暖化対策実施検証事業より〜

 各地で温暖化対策の取り組みが始まっているが、それらを日本地図の上にプロットしてみると、まだずいぶんまばらな分布でしかないことが実感される。実効ある温暖化対策が面的に普及してゆくために、事業の実施そのものと並んで、検証の重要性が上げられるであろう。検証は単にその事業の取りまとめが目的ではなく、次の展開へつなぐ重要なステップである。連載Vol.2では、屋久島における温暖化対策実施検証事業を例に取り上げ、事例の紹介と、検証の結果を示す。

1.温暖化防止政策の効果を測る

  屋久島では、温暖化の防止から、自然保護など広い意味での環境対策まで、すでにいくつもの環境対策事業が実施されてきたが、今回の評価の対象とする事業は大別して二つあり、上屋久町における木質系廃棄物の循環利用システムと、屋久町における廃食油の自動車燃料利用システムである。

 前者は、すでに1998年から稼動している生ごみのコンポスト化と結合して、森林の保全及び林業生産に伴う林地伐採の残材及び木質系建設廃材等を破砕し、堆肥を生産するものである。後者は、家庭、旅館、食堂、惣菜店から排出される使用済み天ぷら油を、ごみの分別回収システムに沿って回収し、再生装置を経て自動車(当面は公用車)の燃料として使用するものである。

2.事業実績を数値で表す

 評価期間は2000年9月から2001年3月のおよそ半年間で、上屋久町の木質系廃棄物の循環利用システムでは、合計784トンが回収され、624トンがコンポストに利用された。また屋久町における廃食油の自動車燃料利用システムでは、合計16,483リットルの廃食油が回収され、17,490リットルの燃料油が製造された(製造量のほうが多いのは、副原料としてメタノールを添加するため)。

 温室効果ガスの排出削減量という観点でみると、総合計(CH4とN2Oを含むCO2相当)で、上屋久町分が386トン、屋久町分が53トンにあたる。詳細な計算方法はここに書ききれないので省略するが、輸送、加工、原材料など間接的な分もすべて含めて評価した数字である。

3.結果をどう評価するか

 評価にあたっては、学識経験者および実務家からなる評価委員会を構成し、資料を事前に送付して検討を依頼するとともに、現地での見学会や評価委員会を開催した。ここでの提言、今後の展開の具体的な方向等が報告書にまとめられた。

 さらに、この事業を全国的に展開した場合の、温室効果ガスの排出削減量の可能性も試算されている。もし全国の同条件の地域(農林業が卓越した全国の市町村)で実施した場合、木質系廃棄物の循環利用では全国で121万トン、廃食油の自動車燃料利用では全国で53万トンにあたる。これは全国の温室効果ガス総排出量のそれぞれ0.09%と0.04%にあたる。一見すると小さい数字のように思われるかもしれないが、たとえば産業部門における2010年までの削減可能量は、窯業・土石業で290万トン、紙パプ工業で191万トン、化学工業(エチレン)で32万トンといったオーダー(いずれも全国)である。これらの大規模な工業技術を駆使してようやく得られる効果に対して、地域の循環でそれに匹敵する効果が得られるという展望が重要であろう。

4.効果のある温暖化防止政策への展開

 事業結果の取りまとめに加えて、異なった分野の専門知識やものの見かたによる意見を加えることによって、新たなアイデア、今後検討すべき内容が指摘された。また事業そのものの内容とは別に、検証の過程で、温暖化対策の検討に必要となる技術的、学問的な基礎数値がまだ不足している点を痛感した。たとえば、各種の製品やサービスに関するCO2その他の原単位がごく大雑把な分類しか整備されておらず、個別の条件を反映できずに、間接的な推定によらざるをえない点が多かった。こうした問題点が抽出されること自体が、防止対策にあたって整備が不足している情報を明確にするという効果もある。

*事務局に本報告書の残部があります。ご希望の方はご連絡下さい。