連載「エネルギー政策の現場から」

京都議定書の運用ルール定まる!〜迫られる自治体の温暖化対策〜

去る7月23日、世界からCOP3再開会合のためにドイツのボンに集まった日本を含む178ヶ国の閣僚級代表は、京都議定書運用ルールの主要項目に合意しました。今後、国内対策を進めるための法整備など、国の動きがあわただしさを増してくると思われますが、自治体も同様に、温室効果ガスの削減対策を本格的に行わざるを得ない状況になったといえます。そこで前回のニュースより、「エネルギー政策の現場から」と題する連載を開始し、個別事例ごとに自治体の温暖化対策の検証と紹介をしていきたいと思います。

まずは連載開始にあたり、自治体の温暖化対策の現状とその特徴をプレビューします。

◆自治体の温暖化対策の現状
〜大半は庁舎内の温暖化対策のみ

 1998年における日本の民生部門CO2排出量は1990年からそれぞれ13%以上、運輸部門で21%増加しています。自治体を個別にみても排出量が減少している自治体はほとんどありません(電力のCO2排出原単位の低下で排出量が減少しているところはありますが)。それどころか、大多数の自治体が地域全体の排出量の実態すら把握していないのが実状です。

2000年3月に全国地球温暖化防止活動推進センターが全市町村に対して行った調査によると(回答総数1,726自治体、回収率53.1%)、8割を超える1,437自治体が何らかの温暖化対策を行っていると回答しています(下図参照)。しかしその種類を平均取り組み施策数でみると、事業者の立場での地球温暖化対策が6.6、市民・事業者への啓発・支援策が2.3、公共事業における環境配慮が1.0、脱温暖化インフラ整備1.5となっており、地域全体の温室効果ガス削減効果の大きい施策への取組みは少なくなっているのが現状です。そこでここでは、脱温暖化型の社会資本整備の取組みの実情について概観します。

◆脱温暖化型の社会資本整備の取組み

脱温暖化型の社会資本整備はエネルギー供給系温暖化防止政策、まちづくり系温暖化防止政策、物質循環系温暖化防止政策、情報系温暖化防止政策に分けることができます。

◆エネルギー供給系温暖化防止政策
〜個別分野ごとのネットワークも活発化

このグループは、エネルギー源を温室効果ガスの発生のより少ないものに代替することを主とするものです。太陽光、地熱、風力、水力、雪冷熱などの自然エネルギー、木材や植物などを利用するバイオマスエネルギーを供給・利用する政策が含まれます。

太陽光発電の導入は、経済産業省が1997年に補助制度を開始したことにより一般住宅への普及が一気に進み、現在は住宅への設置が8割を占めています。政府の補助に上乗せし一般住宅への補助・融資制度を創設する自治体はかなりの数にのぼっています。また、庁舎、学校への太陽光発電装置等の導入も徐々に広がりつつあります。

風力発電施設の導入は1998年にNEDOが補助金制度を創設して以来急速に進み、1997年の2.3万kwから 2000年末には全国で249台、14.5万kwが稼動しています(新エネルギー財団調べ)。民間企業による設置が発電容量で半分を占めていますが、1/3にあたる約70台が自治体または第三セクターが設置主体となっています。

小水力発電施設は農山漁村への電力供給を目的として1950年代には181施設存在しました。電力会社の配電が一般化した現在でも中国地方を中心に半分余りが稼動しています。経営は農協が中心ですが、自治体や森林組合が経営主体となる動きもみられます。

木質バイオマスエネルギーは、EU諸国では既に再生可能エネルギーの約6割を占めています。日本では現在、廃材や除間伐材を細かく砕いて粒子状にした木質ペレットを燃料として用いることが注目を浴びています。かつては木質ペレット製造工場が30工場を越えたことがありましたが、現在は岩手、徳島、高知の3工場が操業するのみです。しかし、森林組合や自治体などが各地で木質バイオマス研究会を設立したり、木質ペレットの利用促進に関する、生産者、利用者、利用機器メーカーのネットワーク化も進められるなど動きは活発化しています。ペレットを用いたコジェネレーションシステム等の導入も検討されています。

雪冷熱の利用は貯蔵庫で雪を夏期まで蓄え、融解水を熱交換し冷気を循環させるものであり、2000年8月現在、農産物を貯蔵する倉庫に33施設、公共施設や物産館等に7施設、住宅に4施設の計44施設に導入されています(安塚町雪だるま財団調べ)。

また、風力発電推進市町村全国協議会(事務局:山形県立川町役場 TEL:0234-56-2211)やペレットクラブ準備会(4ページ参照)、全国明るい雪自治体会議(実行委員会形式で開催。今年は岩手県沢内村役場(TEL:0197-85-2111)といった、自治体が参加、主催する、供給源別エネルギー政策のネットワークづくりも活発化しています。

◆まちづくり系温暖化防止政策
〜施策実施は活発だが温暖化対策としての視点が弱い

このグループは、主として都市計画や建築分野において温室効果ガス発生のより少ないまちづくりを進めるものです。温室効果ガス発生のより少ない交通網や交通システムの導入、エネルギー消費の少ない建築物の導入・改善、温室効果ガス発生のより少ない市街地開発・改善、温室効果ガス発生の少ない水循環システムを導入する政策などが含まれます。

環境自治体会議の専門調査員である西田穣氏が全国地球温暖化防止活動推進センターの委託で2000年9月に全国20万以上の都市・特別区126自治体の都市計画セクションに行った調査によると、都市計画や事業実施の際に温暖化対策との関連を考慮していない自治体が5割を占め、少しは考慮した自治体が4割で、多面的に考慮した自治体は1割にも満たない状況が明らかになっています。考慮した割合が比較的高いのは都市計画マスタープランや緑の基本計画で25%前後ですが、エネルギー消費抑制型ゾーニングまで踏み込んではいません。また再開発事業や住宅団地、工業団地整備事業での温暖化対策への配慮実施率は5%に満たない状況です。

交通分野では比較的取組みが活発ですが、渋滞対策や中心市街地活性化対策を主目的とした場合が多くなっています。特に取組みが多いのはパーク&ライドシステムとトランジットモールを組み合わせた交通社会実験で、鎌倉市、豊中市をはじめ多くの都市で行われています。また路面電車を高性能で乗り心地の良いLRT(ライトレール・トランジット)として復権させる市民運動が活発になり、自治体も関与した研究会が各地でできつつあります。豊橋市の駅前への延伸、岡山市の環状化計画などがその一端である。一方定期券を所持している利用者が休日に家族同伴で乗車する場合に運賃を割り引く環境定期券は、2000年10月現在119のバス会社で導入されています。さらに共用自転車や電動アシスト自転車などの大量導入、自転車道整備などによる自転車のまちづくりが、秋田県二ツ井町や茨城県古河市など20自治体余りで推進されています。

◆物質循環系温暖化防止政策
〜ごみ処理や農業との連携に注目

このグループは、資源の循環利用を推進することにより、資源の製造段階や廃棄段階における温室効果ガス発生を抑制することを主とするものです。一度使用した商品や素材を、そのままの形態で再流通・再利用するリユース政策、有機物以外の廃棄物を加工して再資源化し、最初に使われた用途とは別の用途に再利用する政策、生ごみや家畜糞尿などの有機性廃棄物を加工して再資源化し、再利用する政策が含まれます。

有機性廃棄物の循環政策としては、山形県長井市や栃木県野木町、京都府八木町などで生ごみや家畜糞尿、廃材等を発酵させ、堆肥として農地に還元させたり、バイオガスとして回収して熱利用や発電を行うプラントを設置しています。今回紹介する屋久島の事例もそのひとつです。

一方、非有機系の廃棄物についても、容器包装リサイクル法の完全施行や家電リサイクル法の施行とあいまって、自治体によるリサイクル産業の誘致・支援という形で進みつつあります。北九州市、札幌市をはじめ経済産業省が2001年2月現在、5都道府県3政令市5市町をエコタウンに指定し、廃家電や自動車、廃プラスチックなどのリサイクル施設が建設されています。またプラスチック油化、ガス化、高炉原料化、RDF(固形燃料化)など燃料としての利用も模索されている状況です。

◆情報系温暖化防止政策
〜温暖化対策としての有効性が検証されず

このグループは、温暖化防止に関係する情報を流通させ、各主体の温暖化防止活動・行動を促進しようとするものです。温暖化や温暖化防止行動に関係する学習の機会の提供や効果に関する情報を提供する政策、物やエネルギーの消費を情報化で代替するIT政策が含まれます。これらの政策は温暖化対策としての効果の定量化が進んでいません。

以上、自治体温暖化対策の大まかな動向を紹介しましたが、以後、連載記事において、個別施策ごとの取組み事例を紹介していきます。事例に関する情報、またはご要望などありましたら、事務局までご連絡ください。